一人百物語第八夜 「ポスター」
みなさんご無沙汰しております。
DJ座長でございます。
前の更新がちょうどまだ実習で県外にいるときでしたが、アレ以来色んなことがありました。
ライブやまた実習、そして就活・・・プライベートもホラー鑑賞会やビアガーデンなどがありまして何だか盛りだくさんでございました。
立て込んでるとなかなか集中して日記に向かえないものですが、日記を書く時間が十分にあるとそれはそれであんまり書くべきイベントがなかったりして、ジレンマはあるのですが。
さて、そろそろ怪談の季節になってまいりました。師匠の稲川先生も「冷やし中華の季節が自分の季節」とおっしゃって今かなりやる気になっておられます。私も頑張らねばと怪談の収集に燃えております。
また、師匠が何と恐怖の現場の最新作で四国を訪れたというので、近場の心霊スポットにも来てるんですねー!そしてそこでもって霊を見まくっている!
これは我々わら人形クラブも見に行かないと!!
ということでまた近々調査にいく予定ですので請うご期待ですな。
さてさてた一つ面白いお話が手に入りましたのでご紹介させていただきます。久々の一人百物語ですよー。
一人百物語第八夜「ポスター」
会社員のMさん。仕事の都合で2週間とある地方のビジネスホテルに泊まることになった。
街の中心にある便利なホテルで、ちょうど最上階の部屋が取れた。
チェックインを済ませて荷物を置いてさあビールでも・・・と思ったとき、不意にここはせっかく最上階だし夜景でも見てやろうと思った。
さっとカーテンを引いた。
「え?なんだこりゃ?」
そこには大きなポスターが貼ってあった。
変なポスター。薄ら笑いを浮かべた男が写っている。普通は何かのイベントの日時や場所なんかが書いてあるはずなんだけどもそれがどこにも書いてない。
一体何のポスターか全く分からない。
「最上階で景色が見えそうな部屋の窓をこんなポスターでつぶしちまうか?普通?」
何て言いながらも、勝手にはがしてしまうわけにもいかず、「仕方ないなぁ」とカーテンは閉めてビールを飲み始めた。でもってシャワー浴びてそのまんま寝ちゃった。
次の日、仕事を終えて部屋に戻る。ふと、もしかしたらあのポスターもう取ってくれてるかも・・・と思ってカーテンを開ける。
「やっぱだめか」
まだポスターはそのまんま貼ってある。
しかし、何か違う。何か違和感があるわけだ。よく見てみるんだけども結局何が違和感の原因だか分からなかった。
また次の日、そして次の日と部屋に帰るとポスターはやはりあった。
何日か目にふと気づいた。
「あ、そうか。だんだんとこの人笑いが大きくなってる」
最初の日からするとだんだんとポスターの男性の笑いが大きくなってる。初めは薄ら笑いだったのが、今は普通に口を開けて笑っているのだ。
となると、実はポスターは毎日貼り替えられていることになる。
「一応ホテルのサービスということかな。ルームメイキングの度に貼り替えてくれているわけだ」
それにしても不思議なサービスである。むしろなにか見られると都合の悪いものでもあるのかもしれないなと思って窓の外がとても気になった。
ポスターの端っこと窓枠の隙間から外を見ようとするんだけどもあんまりよくは見えない。
「まぁいいか」とその日もそのまんま寝ちゃった。
さらに何日かすると、ポスターの中の男はどんどん笑いが大きくなって、ある日ついに初め薄ら笑いだった男が、大口を開けて大笑いしているではないか!
さすがに気持ち悪くなったMさんは、フロントに苦情を言いに行くことにした。
1階のフロントには中年の男性が仕事をしていた。
「すみません。部屋の窓にポスターが貼ってあるんですが、あれなんだか気持ち悪いんで取ってもらえませんか?」
「は?ポスターでございますか?」とフロントの男性は怪訝そうに言った。
「そう、部屋の窓に貼ってあるあのポスターです」とMさん。
「ポスターは貼っていないはずですが・・・」
「へ?いや、てっきりホテルのサービス何かかと思ったんですが・・・」
「そうでしたか。しかし当ホテルではそのようなサービスはいたしておりません」
かなりきっぱりと言われてしまい、それ以上何も反論できなかったMさん、複雑な思いでもって部屋に帰った。
「いたしておりませんったってなぁ。貼ってあるもんは仕方ねえよなぁ」
そういいながらカーテンをさっと引く。
「あら?」
さっきまでたしかに貼ってあったと思ったポスターが・・・ない。
「そんなバカな!」
Mさんが何度見てもどこにもポスターはない。下に落ちているかとも思ったが、どこにも見つからない。
何ということだ。自分の勘違い・・・か?
「ポスターがそこにあるとずっと思い込んでいた・・・というのか?」
考えにくいが、他の可能性はほぼゼロ・・・
どうやら自分は慣れない土地に来て疲れていたらしい。
そう思うことにした。
「たしかに、あんな変なポスターを部屋に貼るホテル聞いたことないよな」
窓から見える夜景は美しく、ポスターを貼って隠さねばならないような理由もなかった。
美しい景色を見ながら、少しそとの風に当たりたくなったMさん。
窓を開けてそこから少しだけ身を乗り出した。
夜風は気持ちよく、下を見るとさすがに最上階。はるか下の通りを豆粒のような人間が歩いている。
ふと何かを感じて窓から左を見る。
しかし、そこにはホテルの外壁と隣の部屋の窓枠が見えるだけであった。
そして反対側、右を向くと、
そこには口を限界まであんぐりと開いた男がこっちを向いて壁に張り付いているではないか!!
次の瞬間Mさんのすぐ耳元でもって、
「うはははははははははははははははははは」
と大声でその男が笑った!
その瞬間、ふっと体の力が抜けてそのまま上半身が前のめりになっちゃった。
で、Mさん、落ちちゃった。
しかしちょうどその時期下のテラスでもってやってた屋外cafeのテントにうまいことキャッチされて一命は取り留めたということです。
結局、ホテルの人の言うとおり、あれはポスターじゃなかったんですねぇ・・・
後から分かったことですが、その部屋、一年ほど前からもう5人のお客さんが飛び降りをしている部屋だったんですねぇ。
あの部屋に泊まるお客さんは決まって変なことを言うそうで、「何者かに覗かれている」などと訴えるそうですが、ホテルの人はお客を入れないといけないから何にも言わないってんですねぇ。
みなさんも、出先で泊まるホテルには十分気をつけたほうがよいでしょう。そして、ポスターにも案外注意が必要かもしれませんねぇ・・・
部屋に帰って、見知らぬポスターが増えていたりしませんか?
See you next nightmare!