明けましておめでとうございます。

旧年中はこのような悪趣味なブログにお付き合いいただきましてまことにありがとうございました。
本年も頑張って気持ち悪いお話をupし続けますので、どうか生暖かく見守って下さいますようお願いいたします。

さて、新年一発目は年末にありましたしんみりとしたエピソードを一つ。

その日バイトを終わって遅い晩飯を作っていると、のみ仲間のAKM 氏から飲みに行かないかと電話。

で、近所のバーに行ってチビりチビりとやっておりましたら、ガラガラっと戸を開けて調子のよいおじさんが中に入って来てのみ始めました。

一人で、来店にも関わらず、なかなか賑やかにマスターと盛り上がっておりました。
調子のよいおじさんだなと思って見ておりますと、

今日は特別な日やねん

とおじさん。

へ〜、何の日なん?誕生日とかやっけ?
とマスター。

今日はね、僕と奥さんが初めて出会った日なんよ。

と言っておじさんはうれしそうに酒をのんでおりました。

そうか〜それはいい日やねぇとマスターは杯を差し出して二人は乾杯しました。その後もおじさんはますます調子よく飲み続け、ついにはカウンターに突っ伏して寝始めました。
で、時折身を動かす度に皿やグラスに当たってガチャガチャと音を立てるので、見かねたマスターが、もう今日は飲み過ぎやし帰ったらと言うと、そうやねとフラフラになりながら店を出ました。
相当酔っていたらしく、棚の置物などをなぎ倒しながら出て行きました。
そして結局店の前のベンチに座り込んで寝始めました。

マスターも、とりあえず様子見て帰れそうになかったら私が送って行くわと言いました。

なんて迷惑なおじさんなんだと内心憤慨しました。

するとマスターがこんなことをいうのです。

あの人な、奥さんを亡くしたばっかりなんよ。で、今日が奥さんと初めて出会った日なんやて。やからいっぱいお酒のんでも今日は仕方ないの。
偉い人でな、19年前に奥さんが体壊して入院してからは一人で娘さんの世話と奥さんの世話をして、今もうやっと娘さんも一人立ちして、区切りがついたんよね。

そうだったのですか・・・と我々。

一見無節操に飲んでるだけかのようでしたが、実はそんな事実がかくれておりました。一生懸命一人で育てた娘さんが一人立ちし、奥さんとの思い出の中で酒を飲んでいたのです。もしかしたら娘さんの一人立ちを天国の奥さんとお祝いしていたのかもしれません。

おじさん、今日ばかりは思う存分飲んだくれていいですよ。

そんな気持ちになりました。

よし、やっぱ帰れそうにないようね。私が車で送って行くからちょっと手伝ってもらっていい?と言われ、AKM と私は外に出てベンチですっかり眠っているおじさんに肩を貸してマスターの車まで連れて行きました。

家族のために一生懸命頑張り続けた体は、もうすっかり力が抜けてしまい、僕らにずっしりとのしかかってきました。

私は何だか泣けてきて、心の中でおじさんに、よく頑張りましたねと言いました。

ドアを閉めるとき、運転席のマスターが、ありがとう!お疲れ様!と私たちに声をかけてくれましたので、私達も、お疲れさまです!と返しました。

それは、たしかにマスターへの言葉だったのですが、頑張り続けたおじさんへの言葉でもありました。

ものすごく寒い夜でした。
雪でも降れば絵になるなぁなどと言いながら私達は別れて帰りました。