一人百物語第16夜 ポスター2 その5(完結編)

窓の向こうの方には美しい夜景が広がっている。
そして手前のガラスには窓の前に立つ自分の姿が映っている・・・

その・・・すぐ隣・・・正確には右後ろ・・・

いる・・・

あのポスターと全く同じ顔の男が映ってるんです。

ええ!?

高田さん驚いた!
そりゃそうだ。映ってるってことは、すぐ後隣にそいつがいるわけだ。
しかもあのポスターと全く同じ顔をした男だなんて、もう意味が分からない。
その男はニヤァと口を開けて、高田さんの顔の方に近づいてくる。
あたかもかぶりつこうとでもしているように。

うわあ!

身の危険を感じた高田さんは思わずかわそうとするのだが、体が動かない・・・

ううーー

窓にはどんどん顔を近づけてくる男の様子が映っている。

ああーーもうダメだ!

そう思ったとき、

あんた!大丈夫かい!?

聞き覚えのある女性の声がドアのところから聞こえた。
その瞬間、体の縛りが解けたようで、高田さんはかなりの勢いで後を振り向く形となった。
すると、窓に映っていたあの男・・・いないんだ・・・・
で、代わりにドアの辺りに昨日会ったホテルの客室係の婆さんが立っていた。

あんた!大丈夫かい?

再びそう問うが、

ああ、は、はい

そう答えるのがやっとであった。何が何だかワケが分からない。

あんた・・・あれほど言ったのに・・・窓開けちゃだめだって。
あんたが窓開けちゃうから、あいつ入って来ちゃったじゃない・・・

そう言われて高田さん、何となく分かった。窓に貼ってあったポスター・・・あれはポスターなんかじゃなくて、実はこの世のもんじゃない何か。でもってそいつは窓の外から中に入るタイミングをずっと待っていたのだ。
あの男の笑顔を思い出すと高田さん・・・もうぞっとしちゃって・・・

すぐにその部屋を出て、会社には無理を言って別のホテルを取って、そっちに泊まったそうですよ。

それからちょっとして、もうその街を去るという段になって、あのとき助けてくれた婆さんに礼の一つも言っておこうと思って、最初のホテルに立ち寄り、

すみません、あの客室係のお婆さん呼んでもらいたいんですが・・・

と言ったのですが、ホテル側はそんな客室係おりませんというのです。

高田さん、もう何が何だかさっぱり分かりません、というのですが、ともかく、無事に帰って来れてよかったじゃあないですか・・・ねぇ?

お粗末さまでした。

いかがでしたでしょうか?私は個人的にはこっちのバージョンのお話の方が好きなんですけどね。みなさんはいかがでしょうか?ちょっと長くなってしまったのですが、まあドラマみたいな感じで小出しにするのもまたいいかなと思ってこういう形式にしてみました。

それではみなさん、また何かいいお話が入りましたらご紹介させていただきます。

See you next night mare!

DJ座長でした。