一人百物語 「はじめに」 + 第一夜 「霊感のない男」

「はじめに」

どうも座長です。

テスト前にも関わらず百物語がやりた過ぎて、とりあえず一人で始めちゃうことにしました。

この場でもって管理人が実際に取材などにより入手・収集した怪談をポツリポツリとご紹介していこうかと思います。

そのうち、音声ファイルで語りもupしたいと思います。

もちろん、これはという怪談をお持ちの方は投稿も大歓迎しております。よろしくお願いいたします。

果たして、卒業までに無事99夜までたどりつけるでしょうか??

それでは、まずは第一夜です!どうぞ!



一人百物語 第一夜「霊感のない男」

大学生のAくんは、授業そっちのけでアルバイトを頑張ってたくさん給料を稼いでおりました。夜勤のバイトはなんだか少しだけ社会の裏側を垣間見るようで、結構性に合ったそうなんです。

当然面白くない授業はボイコットすることになりました。そもそも夜勤明けの眠い頭で行ってもどうせ居眠りするだけと割り切って、毎日昼間は家で眠ってたそうです。

それでも許されるくらい昔の話。

彼は貯金ができない性格で、たっぷり稼いだ分は全部飲み代や趣味に使ってしまいました。

そんなこんなで結構リッチな生活をしてきた彼も、ついに最終学年になり就職活動やら卒業研究やらでどうにもアルバイトを続けることができなくなったのです。

かといって貯金もなし。

結局彼は仕送りだけでなんとか生活するために、家賃の安い下宿に引っ越すことに決めました。

首尾よく、一ヶ月3万円で6畳一間セパレートという好物件を見つけたんですね。最寄り駅からも徒歩5分という最高の条件。

何より、今の下宿より随分大学に近くなるのがよかったんです。ギリギリまで寝られる。

その下宿で暮らし始めたAくんなんですが、どうにも不思議なことに入居以来ずっと妙な違和感を感じ続けておりました。はっきり何がおかしいということはないのですが、何だかおかしいのは間違いない。しかし、原因もはっきりしないし、とりあえず分からないものは仕方がないと、気にしないようにしておりました。

ある日仲のよい友人が引越し祝いと称して酒を持って訪ねてきたそうです。

要するに、暇だけど金もないから家で飲もうということでした。

二人で魚を干したような珍味を火であぶりながらちびちびとやっていると、その友人が変なことを言うんですね。

「お前、この部屋で暮らしてて何か変わったことないか?」

Aくんは内心ドキり。自分がずっと感じている違和感のことを言っているのだろうか?

「どういう意味だい?」

とぼけながら聞き返しました。

「いや、変な意味じゃないんだけどね・・・ 引っ越したばっかりでこんなこと言うのは気が引けるけど、オレなぁんかこの部屋嫌な感じがするんだよね」

「嫌な感じって・・・幽霊の類か?」

Aくんはその友人に霊感があることを知っていたんです。

友人は黙ってうなづきました。

「オレは霊感とかないしよく分からないけど、すくなくとも今のところは何も起こってないがなぁ。何かいるのかい?」

Aくんは違和感のことは黙っておくことにしたんです。

友人は答えました。

「いや、俺も霊感あるって言ってもそんなに強いわけじゃないから、姿が見えたりはめったにしないんだ。ただ、悪い場所とかに行くと妙に嫌な感じがするっていうのか・・・」

最後の方、友人は言葉を濁したんですが、要するにその部屋はどうも霊的にあまりよくない場所らしいのです。

さすがにそんなことを言われると違和感のこともあったし、Aくんも少し気持ちが悪かったが、自分は霊感もないし実際何も起こっていないわけだから、さしあたってはあまり気にしないようにしたそうです。

深夜、友人が帰るとき、

「いいか。ちょっとでも変なことがあったらすぐにオレに連絡してくれ。そういう関係の知り合いがいるから相談するよ。そうでなくても、何か嫌な予感がするから、できるだけ早くこの部屋は出た方がいい」

と言い残したのでAくんやはり一層気味悪くなってきました。

やだなーと思いながらとりあえず歯磨きをして寝ることにしました。

しかし、何だろうなぁこの違和感・・・

あいつも妙なこと言ってたしなぁ・・・

そんなことを考えながらぼおっと歯を磨いていると、ふっとAくん何かに気づいたんです。

「んん?」

歯を磨きながらじいっと鏡を見る。

今まで鏡になど注意を払わなかったけど、何かがおかしい・・・一体何が?

じいっと見る・・・

・・・

・・・

・・・

よく見ると、Aくんの歯磨きの手の動きと、鏡の中の手の動きが全く反対向き・・・

Aくんが手を右に動かすと、鏡の中の自分は左に、Aくんが左に動かすと、鏡の中の自分は右に手を動かすのです。

気づいたAくん、声も出せず歯ブラシを落としたそうです。

そのとき、鏡の中の自分は歯ブラシを持ったまま、微かにニヤリと笑ったそうです。


Aくんはすぐにその家を引き払いました。

「いやぁ、オレ鈍感な方なんだけど実は霊感あったんだなぁ」

そう言いながらAくんは笑っていました。

今でも歯を磨くときには鏡を見ないようにしているとのことです。

一人暮らしの方、今夜の歯磨きのときよ〜く鏡を見てくださいね。


・・・


自分には霊感がないと思っている人、実は何か見えているのに気がついていないだけなのかもしれませんよ?


それでは、いい夢を。

See you next nightmare!


深夜の洗面台に写ったものは・・・