一人百物語 第二夜 「落ちてくる」

こんばんは。

一人百物語もやっと第二夜を迎えました。

これは、ちょっと前にバイト先のHさんから聞いた話に関係のある、とある小学校の掃除当番のお話でございます。

今はもう大人になってる和絵さん(仮名)なんですが、小学校のときの掃除当番で、どうしても忘れられない体験があったらしいんですね。

その週和絵さんは友達と三人でもって体育館の掃除を担当することになっており、月曜日のホームルーム前に体育館に集合したわけです。

さて、三人で掃除するにはとても広い体育館なもんですからとりあえず三人で分担して床のモップがけだけして終了にしようとことになったのです。

和絵さんはちょうど床の真ん中辺りを担当することになり、すう〜っとモップをかけていると…

カラーンっ

突然後ろで音がするんですね。

え?と思って振り返ると今自分が通って来た道筋に何か落ちてる。ふっと拾い上げるとそれ、赤い色鉛筆なんです。

おかしいなぁ。さっきモップかけてきた場所なわけですから、そこに物が落ちてるはずがないんですね。

あるとしたら、どこかから転んできたか・・・あるいは天井から落ちてきたかしかないんです。

他の友人たちに聞いてもそんなの知らないと言うし、変だなぁと思いながらもう一度よく色鉛筆を見てみると、端の方が少し削られててその部分に名前らしきものが書かれているのですが、かすれちゃっててちゃんと読めないのです。

名前が分かれば落し物ということで持ち主に返せるのですが、よく分からないので和絵さんは仕方なしに自分の机の中に一旦置いておくことにしたのです。

なぜ職員室に届けなかったか・・・それは本人にも分からなかったらしいのです。何だかこれは届けてはいけないような、そんな気がしたんだそうです。念のために言っておきますが、和絵さんには霊感はありません。

さてその次の日も、和絵さんたちが体育館で掃除をしていると・・・

カラーンっ

また和絵さんの後ろの方で音がする。 え?

振り返るとまた何か落ちてるんです。

拾い上げると物差しなんですね。

「まただ。変だなぁ。誰のだろう?」

と思っていると、あれ?まだ他にも何か落ちている。

それ、どうやら何かのネジらしいんですね。どこを留めていたネジかはよく分からないのですが、なんでこんなところに落ちてるんだろう?さっきモップかけたときは無かったのに・・・

なんとも言えない気持ちで天井を見上げましたが、そこにはとくに異変はなく、普通の天井があるだけなんです。

また、和絵さんはそれらをあえて届けようとはせずに自分の机の中にしまったそうです。

そうして、次の日も、また次の日も、和絵さんが掃除をしていると必ず後ろに物が落ちてるんです。

それも、クレパスやら消しゴムやらとにかく文房具と、あと何の部品か分からないネジが一緒に落ちてるんですね。

そんな経験を繰り返すうちに和絵さんはどうやらこれらは天井から落ちてきているに違いないと思うようになっていました。友人たちも自分たちがそれら落ちてきたものを見ていない以上、

「もう上から落ちてきたとしか考えられないんじゃない?」と言うのです。

そして、体育館での掃除当番の最終日。

またいつものように和絵さんが体育館の真ん中の辺りをモップですうっと掃除していると、

カラーンっ

来た!と思って振り返るとまた鉛筆が落ちている。

「まただぁ」と思って拾いに行こうと4〜5歩ほど戻った瞬間・・・


ドガシャーン!!


ものすごい大きな音でもって何かが壊れるような音がした。 きゃーっ!!

その場にいた3人みんなが悲鳴をあげた!!

さっきまで和絵さんが立っていた場所のすぐ先に、天井から落ちてきた巨大なライトがぐしゃぐしゃに割れてしまっているのです。

あのままあそこを通っていたら間違いなく和絵さんは・・・

またおかしなことに、そのライトのちょうど背中側というのか、上側に赤い小さなランドセルが引っかかっていました。

後で分かったことですが、それは何年も前から行方不明になっていたその小学校の2年生のA子ちゃんのものでした。その子は未だに見つかっていないそうです。そして、なぜそんなところに彼女のランドセルがあったのかは、誰にも分からないんだそうです。



「もしかして上から物を落として知らせることで、A子ちゃんがあなたのことを落ちてくるライトから守ってくれたのかも知れないですね」

と私が和絵さんに言うと、

「そうかも知れません。でも、そうでないかも知れません」と言うのです。


「え?どういうことですか?」


「実は、最後の日に鉛筆は落ちてきてないんです。あれ、私の話を冗談半分に聞いてて面白がった友人2人が私を驚かそうとして投げてきた鉛筆なんです。そのせいか、いつもよりもちょっと早く音がしちゃったんですね」と和絵さん。


「そうですか・・・それであなたは助かったんですね・・・」聞いた私は何とも言えない気持ちになりました。



はるか下でモップがけをする和絵さんを毎日見下ろしながら、夢中になってライトのネジを緩める小さな女の子の姿を想像して、ぞっとしました。

夢中になりすぎて、自分のランドセルから物が落ちるのにも気づかなかったんでしょうね・・・


その話を聞いて、久々になんだか気持ち悪〜くなりました。


みなさんも、お部屋の電気の裏側には十分に注意してくださいね。



天井から照らすライト。その裏側に潜むものがいるという・・・